低炭素社会に向けて何ができるか
わの会文集16号では、秋元勇巳博士の「地球環境をどうする-ガイアとプルトニウム」と題する講演とジェームズ・ラブロック著「ガイアの復讐」、それからDavid de Rothschild著:LIVE EARTH “The Global Warming Survival Handbook”77 Essential Skills to Stop Climate Change --- or Live Through Itの紹介と私の考えていることを述べさせていただいた。
まえがきとダブルが、16号文集での私の拙文の最後に記した「『ちりも積もれば山となる』の諺に表わされるように、日々無駄なエネルギーの消費を減らす努力をしようではないか。それを今日から始めよう。」を十分とは行かなかったが、実行して来たつもりである。
例えば、自宅から秦野駅までの約30分は歩くことにした。また、約500メートル先の畑に出かける時は、軽自動車を使わずに鍬他の用具は手持ちで運び、収穫物も大きなゴミ袋に入れて持ち帰り、その袋は洗って再利用するようにした。畑を耕すのに耕耘機の使用を勧められたが、何とか鍬一本でがんばっている。約100坪くらいなのでこれでもやっていける。買い物にはリュックサックを担いで行ってみたが、まとめて沢山の品物を持ち帰るのは、帰りの上り坂がきつくて無理であった。車は軽自動車を主に使うが、遠くに出かけるときは安全を考えて普通車を使う。次の車検更新の時期が来たら、ハイブリッドか出来たら電気自動車を購入したい。家の暖房は全てエヤコンにしたので、灯油は全く使用しなくなったが、電気エネルギーは同じように炭素エネルギーに負うところが多いので不十分である。太陽電池の導入はこれからであるが、設備購入に当たって2009年度から国の補助金が復活されること、余剰発生電力の電力会社への売却料金の見直しが行われる、とのことで、これに期待して、わが家にも導入したいと考えている。
2008年5月7日の日経エレクトロニクスの記事(野沢哲生記者)によれば、
“太陽光発電は、発電量,コスト,そして効率の3点で一般に思われているよりも大きな役割を果たせる可能性があります。まず発電量に関しては、2007年の太陽電池モジュールの生産量は、そのモジュールで可能な最大発電量に換算して約3.7GW分でした。
4年後の2012年には15GW/年になる見込みです(シャープ調べ)。平均的な原発1基の最大発電量が1GWですから、その規模の大きさが分かるというものです。もちろん,これらはあくまで最大発電量で,平均発電量を比較するには稼働率を考慮する必要があります。
仮にすべて日本で利用することを前提にすると,太 陽電池の稼働率は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によれば約0.12。これはつまり、太陽電池が十分な性能を発揮できるのは24時間/日 ×0.12=2.88時間/日ということになります。一方,原子力発電の稼働率は故障や地震の多い日本では0.6~0.7。
これらの稼働率を考慮する と、4年後の太陽電池の年間生産量は,原発2.5~3基分の発電能力に相当する計算になります。2012年以降は生産量がさらに増えていくことを考える と、意外に多いと思うのは私だけでしょうか。実際には太陽電池の実質的な発電量はさらに多い可能性があります。太陽電池を砂漠などに置けば稼働率は 0.12よりずっと高まるためです。
また,電力の需要が本当に高いのは夏の日中であることを考慮すると、最大発電量の値がむしろ重要である可能性もあります。太陽光発電の国の補助金は、今年度は1キロワット当たり7万円程度になると予想されているが、住宅1戸当たりの発電量を3~4キロワットとすると、補助金は1件について20万~30万円程度で、今年度内に約3万5000件の実施を目指している。”
とのことである。
因みに、ましこ環境大学講座資料にあるNPO法人PV倶楽部とちぎ事務局長・納富信也氏において、太陽光発電の詳しい解説がなされており、ドイツの文献で、Hans-Joachim Schellnhuber著; World Transition: Towards Sustainable Energy Systems (2004)では、100年後の世界で一次エネルギー源の割合を図示すしているが、2050年を読み取ると太陽電池と太陽熱による太陽エネルギーの利用が全体の約24%で、天然ガスが約26%で続いている。
また石油が18%弱、風力が11%等となっている。原子力は1%にも満たないのは意外であるが、放射性廃棄物のことを考慮すればうなずける。
風力の利用は、日本でも地方自治体で力を入れているところもあり、旅行すると風力発電用の風車が目に付くようになった。新聞の報道などで、風力発電所付近の住人が、風車の発する騒音に悩まされるといった問題も起こっているようだ。
上記の文献では、地熱の利用は2%弱と予想されているが、日本のような火山国では地熱の利用はもっと比重を高められると思う。
九州大学大学院地球熱システム学研究室では江原幸雄教授等が九重火山を対象にして下深部の高温の火山エネルギーから地下浅部の地中熱エネルギーまでを一つの地球熱システムとして、持続可能なエネルギー開発利用を目指して研究を行っている。
これらの研究は火山から熱を取り出して利用 するだけでなく、火山の防災問題にも貢献するもので、火山の地下がどのようになっているかを調べ、地下から来る熱の量を計ったり、地震を観測したり、地磁気を測定する。
また、火山の熱エネ ルギーを安全に取り出すために、火山の地下の動きをよく知るために、地下の温度、地震活動、地盤の変化などからそれを調査し、火山から熱を取り出す方法も研究している。
詳細は、「火山の熱システム-九重火山の熱システムと火山エネルギーの利用」(江原幸雄著)を参照されたい。
海洋エネルギーを利用するものとして、波力発電、潮汐発電、海流発電、潮流発電などがあり、海に囲まれた我が国には期待の持てるエネルギー源と思われる。この中でも潮流は潮位差があまり大きくなくても海峡地形で流速が早くなる所に向いている。日本での推定では潮流エネルギーは2500万kWで、年間2190億kWhで、5530万世帯分になる、との説もある。
しかし、大潮/小潮による潮流の違い、潮の干満による水深の違い、岸からの距離の違いなどの影響など、解決すべき問題も多いようだ。干満の差を利用した潮汐発電では、フランス・ブルターニュ地方にランス潮汐発電所が24万kWの出力で実用化されている。ここでは潮位差が8mもあるダムが建設され、それによる環境変化が問題になったようだ。
自然のエネルギーを利用するのは、それによる環境の変化を十分確認して行わねばならないのは当然であるが、このための時間も限られているのが辛いところである。
社会全体、あるいは企業が行う研究活動が効率よく連携してメリットとデメリットをはっきりさせるようなシステムを国あるいは世界全体で進めて行けないものだろうか。
振り返って今日の日本、世界の未曾有の経済的な混乱の中、日本は輸出赤字国となってしまった。自動車、エレクトロニクス製品など工業製品を輸出して原材料、食料などを輸入して生きて来た我々は、赤字が続けば当然、衣・食・住の生きていくのに不可欠なものを賄うことが出来なくなる。工業製品が潤沢にあっても生命を維持するこれらのものを自国内で生み出せねば、死ぬことになる。衣・住は何とかしても、食は不可欠である。日本の食料自給率は40%と言われている。
最近のニュースで派遣労働者の人々で、職を失った人が農業を、ということが報道されたが、これが大きな流れとなって、日本社会の仕組みを変えるまでになるかは、まだ分からない。
ついこの間まで、飽食の時代、大食い競争を連日放映していたテレビが、最近はワンコイン・ランチなど食事をいかに安く済ませるかに変わって来ているが、そのうちに、今まで食べていなかったものをいかに美味しく食べるかという番組に変わってくると筆者は予想している。メタボなど死語になるかも知れない。
農業の工業化と言う言葉に、少し反発を感じるが、限られた面積で、また少ない労力で食料を確保するということは我が国にとっては必要なことと思う。食料自給率をせめて60%位までは向上してほしい。これは、低炭素社会作りに向けての運動の中にある「フード・マイレージ」、すなわち食料を輸送するための炭素消費を削減することに直接関係する。
また、今後増加する高齢者が、健康で、食料の生産者として活躍するというような社会があってもよいのではないかと思う



