ツチノコの一言
ツチノコの寿命は定かではありませんが30年程度のようです。私の心の中に住んでいるツチノコの長老は特に長生きです。先日、冬眠明けを前にして昔話をしてくれました。
それは、ツチノコがたくさん住んでいた70年くらい前の話です。
そのころ、空気はきれいで、夜空には星が輝き、蛍の光が眩しいくらいに感じられ、夜でも遠くを見ることができました。
また、聞こえる音は、風を受けてよろこぶ木々の葉の音と動物の会話が主体だったので、餌になる虫も見つけやすかったそうです。
山の中腹のあちこちには池があり、ツチノコたちはそんな池の大きな木の根の穴や岩穴を棲家にしていました。
隣の池の大きな岩陰には美しく愛嬌の良いツチノコのアイちゃんが住んでいて、長老と激しい恋の末に結ばれたりしました。
その当時の人間どもの暮らしを思い出すと、明かりはランプを使い、農作業も人力が主体で、機械作業などはほとんどありませんでした。履物は草履が主体でしたし、着衣は着物で足袋や靴下もあまり使いませんでした。
また、外灯なども無いため、ツチノコが夜間行動するのには大変都合が良かったのです。人間どもの行動で一番迷惑だったのは、人糞を畑に撒いて臭かったことです。
その仕返しに、若く元気なツチノコのコロちゃんが脅かすと、人間どもは大騒ぎで逃げ回っていました。
しかし、たった数十年の間に現在の有様です。
人間の文化生活向上のために空気を汚し、夜は外灯で明るく照らし、餌になるような虫などは殺虫剤で殺し、洗剤や油を含む家庭排水を平気で流し、使い捨ての消耗品を使い、・・・・・・人間の都合の良いことは何でもしています。
人間どもは畑に人糞を撒かなくなった代わりに、使い捨てプラスチック製品を川や海に流している。
ツチノコの長老は溜め息をはきながら、さらに一言。
『最近は人間どもが住みにくくなったと言って、環境改善を口にしているが、環境を破壊しているのは人間どもで他の誰でもない』
『ツチノコの長老様。それではどうしたらよいのでしょうか?』と私がたずねた時、ツチノコの長老は大きな石の上にドテンと座ったまま動きませんでした。
よくみると、それはツチノコのような姿をした石でした。
おわり



