地球温暖化について

自分自身の反省をこめて言うと、私は最近に至るまで地球温暖化の問題はそれほど深刻に捉えていなかった。

1997年12月の京都議定書についての報道でも、米国がこれの批准を拒否したのは大国のわがままと思うくらいで、それほど深刻には捉えていなかった。

ことの重大性を認識したのは、昨年7月に東京で行われたカリフォルニア大学日本同窓会総会での三菱マテリアル・名誉顧問の秋元勇巳博士の「地球環境をどうする-ガイアとプルトニウム」と題する講演であった。

講演の要約についてはインターネットで上記日本同窓会のホームページをご覧いただきたい。

秋元博士の結論としては、次世代のエネルギー技術が確立するまでの中継ぎとしてプルトニウム・リサイクルを包含する原子力エネルギー利用をさらに推進すべきということである。

この講演の中で引用されたジェームズ・ラブロック著「ガイアの復讐」(中央公論新社2006年初版)を読んで、さらに地球温暖化の深刻さを理解することができた。

ジェームズ・ラブロックは英国の生物物理学と医学の両分野の専門家であるが、電子捕獲検出器(ECD)の開発者でもあり、1960年NASAの火星生物探査計画に参加し、その過程で地球大気の特殊性を認識し、「生物圏が地球気候と大気組成を生物が生きていくのに最適な状態に調整・維持している」という「ガイア仮説」を提唱した人である。

彼は比較的簡単なモデルを用いて、地球の気候の将来予測を行っている。炭酸ガスの濃度が上がると、大陸海洋ともに「砂漠化」が進行する。

赤道付近で暖められた大気は上昇気流となってスコールを降らせ、熱帯雨林を育てるが、水分を落とし成層圏に達した空気は北緯、南緯30度近辺に降下して高気圧帯を形成し、砂漠化を進行させる原因となる。

また海洋は上から暖められるため、下の冷たく重い海水とは混じりにくい。上下で10℃以上もの温度差があると、数十メートル厚の表層水が形成される。

暖かい表層に栄養があればプランクトンや藻類が繁茂するが、やがてその死骸は皆海底に沈み、その分解によって生ずる栄養分は表層には戻れない。

こうして栄養分を使い尽くした表層のプランクトンは餓死し、海の砂漠化が進む。陸上では平均気温が22℃を超えると、降雨と蒸散のバランスが崩れ、海洋では平均水温が12~13℃を超えると表層水形成のおそれが高まる。

ラブロックは二酸化炭素濃度が500ppmという値を臨界濃度と考えていて、これに到達すると地球温暖化は引き返すことの出来ない状態に達する。これは約3度気温が上昇することに相当する。

地球全体で平均気温が5℃低くなると、氷河が北ヨーロッパなどの文明地帯まで覆うようになるが、砂漠地帯は縮小され、森林が増える。

5℃高くなると陸も海も砂漠化が進み、極の近くのみが快適な生存条件を満たすところとなる。炭酸ガスがもたらす海陸の焦熱化砂漠化現象は、5,500万年前に起こった状況とよく似ている。そのときは通常の気象条件に戻るまでに20万年必要だった。

今のまま炭酸ガスを排出し続けていると、21世紀半ばには5,500万年前の焦熱化をもたらした閾値を超えてしまう。一旦高温安定状態に入れば容易に立ち戻れず、文明は崩壊状態になることも予想される。

このような地球の危機を目前にしながら、自分自身を含めて我々は何と無策で手をこまねいた状態にあるかである。たとえ話に、鯉を煮るのに水を張った鍋に生きた鯉を泳がせて火にかけると、何も知らぬ鯉は水の温度の変化がゆるやかならば気のつかぬうちに茹であがってしまう。

一方、熱湯に生きた鯉を投げ込めば鯉は生き残れるかどうかは別として、とび跳ねて鍋からの脱出をするだろう。

我々は、今や前者の水を張った鍋の中で火にかけられた状態にある。気づいた時には「既に遅し」になりかねない。悲観的な見方をすれば、もう手遅れの状態に達しているかも知れない。

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