地球をまもる方策

地球温暖化を防ぐためには、炭酸ガスの放出を抑制し、炭酸ガスを吸収して酸素と水蒸気を放出してくれる森林や藻類を保護することが勧められている。

大気中の炭酸ガスのバランスを崩しているのは太古から地中に眠っていた化石燃料を炭酸ガスとして放出しているからなので、バイオ燃料のように自然のサイクルの中の炭酸ガスの放出ならば問題がないということで、バイオエタノールの増産に血道をあげている国々がある。

食物を生産するための畑をバイオ燃料のためのトウモロコシ栽培に切替え、あるいは豊かな酸素元である森林を伐採してトウモロコシ畑にするなどの愚挙が横行している。人間の欲の深さが問題の本質を取り違えていることだ。

「羅針盤」というEメールを発信してくれる大学時代の友人から、温暖化する地球で生き延びるための著書を紹介された。

David de Rothschild著:LIVE EARTH “The Global Warming Survival Handbook”77 Essential Skills to Stop Climate Change --- or Live Through It (生きている地球“地球温暖化生き残りハンドブック”気候変動を止める、あるいはそれを生き抜くための77の重要な手段)がそれである。

手段のいくつかを列挙すると、03:白熱電球を蛍光灯に替える、05:車でもテレビでも小型のものに替える、06:車の排ガスのゼロ化を推進する、07:旅行は飛行機に乗らず、車か船にする、14:断熱材、太陽光発電・給湯を利用して家をグリーンハウス化する、15:微生物を活用して生ゴミを堆肥化する、16:二酸化炭素発生量の少ない発電源を選択する、17:子どもたちに温暖化防止の教育をする、18:発泡スチロール容器の使用を抑える、19:不用品の交換・再利用を進める、20:セーターなど厚着で暖房を抑える、21:出来れば通勤せずに自宅で仕事をして通勤に必要な莫大なエネルギーを削減する、23:パソコンの梱包材はメーカーに回収させる、29:フードマイレージ(食品が産地から何マイル運ばれてきたか)を計算し、マイレージが貯まらないようにする、30:農家と農産物の特約をする、35:自転車に乗ろう、36:ダウンタウンの渋滞を解消する、39:賢く植林を進める、40:職業を考える(地球温暖化防止には新たな職業が数多く必要だから)、42:車は大勢で使う、45:風呂にはまとめて入る、47:風車の活用、50:木より酸素発生量の多い竹を植える、51:非常に深い穴を掘って、地熱エネルギー・システムを利用する、57:雨を活用する、68-77:砂漠化した地球で生き残る知恵、等々である。

この本で述べている手段は非常に具体的で、一般庶民である我々でも努力すればできることが多い。例えば03の蛍光灯の利用は日本では相当進んでおり、我が家ではほぼ完全に蛍光灯化してある。最近は白熱電球と同じような形状をした電球もあり、使う上でも問題がない。

05については、最近は燃費のよい軽自動車を主に利用しているが、軽自動車にもハイブリッドまたはコンセントから直接充電することが可能なものがあればと思う。

07は海外旅行には飛行機を利用せざるを得ないだろうが、ここ数年海外旅行をしていないので、幸か不幸か対策に協力している。因みに、ニューヨークから東京へのジェットによる飛行で、乗客一人当たり約2.4トンの炭酸ガスを放出することになるそうだ。

14のグリーンハウス化に関して太陽光発電は近い将来に我が家でも実現したいと思う。東京などの屋根の少ない住宅は別として、郊外の一戸建て住宅でこれを進めれば日本全国での省エネルギー効果は大きい。

ただ、これに対する投資額が多く、経済的にのみ注目すれば償却に20年はかかりそうである。税制上の優遇措置とか国からの補助がほしいところである。

15は家庭菜園をやっているので十分活用できるので、今年は臭いが嫌だという家内を説得して実現したいものである。

23は秦野市の資源回収に出しているので合格である。29は日本の国内自給率が40%(カロリーベース、数量的には20%以下のものも多い)という話も聞くように、我が国が海外からの輸入食物に依存している現状を変えない限り高いマイレージのままだろう。

秦野市には農協が運営している「じばさんず(地場産ず)」という農産物マーケットがあり、ここでは生産者の名前の分かる新鮮な農産物が販売されており、家庭菜園で栽培していないものをなるべくここで買うようにしている。39の木を植えることは、一本の木がその寿命の間に1トン以上の炭酸ガスを吸収することにある。

気を付かなければいけないのは、木の寿命が来た時これを燃やさずに材木や埋め立て用に使って炭酸ガスを発生させないことである。

35の自転車の利用はしたいが、道路事情を考えると問題が多い。車道を自転車で走る危険を避けて歩道を走ると、今度は歩行者との接触の危険が生じる。オランダのように自転車専用の道路を整備するのが一番であるが、そのためのスペースを捻出するのが困難である。

特に高齢者の自転車利用はより危険が大きい。45は風呂に家族一緒に入ろうということらしいが、子供が小さい間はよいが、大きくなったら拒否されるだろうし、スペース的にも難しい。

47は、我が国のニュースで風力発電の塔が風で倒されたとか、風車が設計通り動かなかったなどと、悪いイメージが喧伝されているが、ヨーロッパでは確実に実用化されているようだ。わが国でも最近は実用化が進みつつある。

50は竹の豊富な日本に向いた話だが、竹は木よりも多く炭酸ガスを吸収し、35%も多くの酸素を放出するのだ。竹の利用には古くから日本人の知恵が活かされており、竹をもっと植えて竹製品を昔のように、種類も量も増やしたいものだ。

51の地熱の利用は地中深く穴を掘ってビルの空気を送り込み、地下深くの一定に保たれた温度にして送り返すことで、冬は暖かく、夏を涼しくすることだ。

日本では冷暖房のない時代に日立の創始者・久原房之助氏が六甲の麓の別荘にこのような仕掛けを取り入れたと聞いたことがある。地熱の利用なら、この本では述べられていないが、火山国日本ならでは、火山の熱を利用した発電に注目すべきだろう。

不幸にして火山が噴火して発電所が吹き飛ばされることがあっても、その被害は限定的で原子力発電所よりはましと思われる。57の雨の利用も我が家で是非取り入れたいものである。東京の下町で雨水をタンクにためて生活水として使っている人の紹介をテレビで見た記憶がある。

飲料水に使うには注意が必要だが、トイレ用、洗濯用、風呂用などにはすぐにでも使えそうだ。粉塵、スギ花粉、ボウフラなどの混入を防ぐ必要はあるが。

以上の手段の中で、05、06、21、35、36、42は、要するに移動手段としての自動車に関連することだ。自動車に乗ることを我慢して、もし時間の余裕があれば「歩くことが一番」と思う。「わの会」のハイキングのリーダー、小川国昭さんの「生きる」ということは「歩くこと」なり、は、まさに明言である。

以前にも書いたように、100歳まで生きる目標を持つ私は最後まで自分の足で歩いていたい。しかし、70歳を過ぎてから膝の痛みに悩ませられることが多くなっていた。

家内が友人に勧められて、毎朝ウオーキングを始めた。私もお付き合いで一緒に歩き始めたが、約1時間自宅のある団地の周囲を歩くのだが、とにかく歩いた後のそう快感がよい。最初は膝の痛みが気になっていたが、2か月くらい続けたところ、ほとんど気にならないようになった。

お腹のまわりもすっきりして、若いころのズボンを無理なくはけるようになった。68-77は表題として、「警告:もし他のすべてがうまくいかないなら」として地球が焦熱地獄化したときの生き残り手段を述べたものである。

私の生きている間にはないと思うので、内容の紹介は割愛する。知りたい方は冒頭のペーパーバックを、アマゾンなどを通して購入しては。1,600円位である。ご参考までに、この本の方策の最後の章は、67:この本を人に紹介してください、である。

最後に私の考えている技術者としての防衛策を記したい。技術の世界を離れて10年以上経ってしまったので、荒唐無稽とお笑いの向きもあろうかと思うが、あえてお許し願いたい。

私の考えでは、温暖化防止のために、人類は化石燃料を燃焼させてエネルギーを得ることを止めて、電気エネルギーを直接使用することが一番と思う。そしれは、電気エネルギーを主に太陽光、風力、水力、地熱、潮力などの自然エネルギーから得るのである。

原子力発電はあくまでつなぎの発電手段であろうと思う。原子力発電は既に約50年の歴史があるが、未だに安全についての十分な信頼が確立されているとは言えない。特に日本のような地震国での構造物としての発電所の安全性には不安が残る。

また使用されている材料の放射線被爆の下での劣化も放射線のない場合に比べて大きいと聞く。プルトニウムのリサイクルも同じような問題を抱えている上に、不要な放射性廃棄物の処理の問題が大きい。

NUMOのテレビでの広報で、地中深く埋設するようなイラストが示されているが、地殻変動によって埋設された廃棄物が地表近くに飛び出してきたら、と考えてしまう。いっそのこと、半減期の長い放射性廃棄物の量はそれほど多くならない筈だから、ガイアの外にロケットに乗せて運びだしたらという考えもある。

しかし、万一、ロケットが打ち上げ失敗で地上に落ちてきたらもっと悲惨なことになる。自然エネルギーの中での太陽光だが、太陽電池ついては既に述べたが、天候にも左右されることを避けるために、天気のよい日の電力を貯蔵する小型高性能の電池がほしい。

風力は前述のように欧米で実用化が進んでいるようだが、日本での風力発電にその技術をそのまま取り入れても問題がありそうだ。とにかく風土気象条件が異なる。日本の台風シーズンは風力発電にとっては最大の課題と考えられる。

一般に風力発電には平均4~5m/secの風が必要だが、我が国の台風の時は、場合によっては60m/secの風に立ち向かわねばならない。

そのためには、台風襲来の時は風車に当たる風を絞って、余分な風力を受け流す工夫が必要だ。そのような可変的な構造物と一体化すれば、日本の風土に合った風力発電が生まれるのではないか。また雷への対策も取りやすくなる。

地熱発電については、地熱を利用して蒸気を発生させる従来の発電技術によって可能であり、日本は世界第五位の地熱発電国である。わが国では九州や東北地方に地熱発電所が集中しているが、温泉地などの観光とのかねあいが問題のようである。

潮力の利用は日本ではあまり実用化の話を聞かないが、やるとすれば風力と同じように、台風対策が必要だろう。フランス、ノルウエー、英国、米国では実用化されているようだ。日本なら、鳴門海峡や明石海峡が候補地となろう。

自然エネルギーの間接的な利用として、前述のバイオエタノールのような考え方があるが、前述のように食糧生産との競合、森林伐採の問題があるので落第だと思う。

しかし、沖縄県で検討されているサトウキビからのバイオエタノールは、砂糖の消費が伸び悩んでいる状況から、森林を伐採して畑を増やすことがなければ、合格にしたい。

私はむしろ藻類、細菌の利用に期待したい。私が富士フイルムに入社した時、中央研究所で、北島昌夫さんが説明してくれた銀をその体内に取り込む細菌に大いに興味を持った。その菌が銀を取り込むと、その重みで沈むという話はわくわくするようなものだった。

細菌を使った鉄のバクテリア・リーチングの話を知っていたが、銀を取り込むとは、世の中には変わり者の細菌がいるのだと感じ入った。特に温泉の周りにいるようだ。

先日、テレビで「目がテン」を見ていたら、海洋バイオテクノロジー研究所で、まさに軽油成分を光合成する藻類「シュードコリシスティスの一種」が発見されていて、これを培養して得られた軽油を使ってテスト用のレーシングカーを走らせて見せた。

65Lの水中から30mLの軽油が合成された。私自身はこの話に大いに興味を惹かれた。これを実用化するには、当然いくつかの問題がある。

一つはこの藻類の培養のための温度条件が厳しいこと、1/200mmしかない単細胞の藻を分離して、軽油成分を濃縮・精製する技術にある。この藻の改良は遺伝子技術の応用が必要だし、分離・濃縮にはエネルギー消費の少ない化学工学的手段の開発が必要である。

しかし、これが実用化されれば、広い池または休耕水田を使って、まさに油田が実現できるのではないか。これならば、ある程度、食糧生産との競合が避けられるし、軽油はガソリンより揮発しにくいので、大気中への放散も減らせる。

ディーゼル・エンジンならば、ガソリン。エンジンよりも排ガス削減の対策にもなる。何よりも化石燃料からの炭素放出がないことに意味がある。大型の化学装置としてならば、例えば、酸素、炭酸ガス、水、光りなどは透過するが、軽油などは透過しない膜でカバーした多段の堰を配した傾斜タンクの上部から原料の藻類を投入し、太陽光による光合成を行いながら藻類スラリーがゆっくりと下方に流れていく。

ある程度軽油が合成されれば、軽油を含んだ層が水と分かれて上層を形成するので、これを分離して、蒸留して軽油を得る。この時の温度管理は温泉などの地熱で行う、というような夢プロセスが考えられる。さらに夢を続けると、多段の堰の途中から藻類スラリーの一部を還流して初段の堰にフィードすれば、これが原料藻類となって無限のサイクルが完成する。

問題は最終堰からの軽油を分離した後の藻類残渣の処分だが、これが肥料や、家畜の飼料、固形燃料などに使えればよいだろう。もっともこのようなプロセスが自然環境と調和できるかどうか不安は残るが。

以上は、大気中の炭酸ガスに起因する地球温暖化のレベルがまだ極端な温度変化を引き起こす点に達していない、即ち、省エネルギーなどの努力で挽回できる状態を想定している。もし、炭酸ガスを積極的に削減する必要がある状態まで追い込まれていたらどうするのか。

別の言い方をすれば、炭素を固定化するにはどうしたらよいのだろう。大気中の炭酸ガスを捕集して、これを炭酸カルシウム、炭素として固定する。あるいは、炭酸ガスを地中深く、ガスの漏洩が起こらないような地層中に貯留する。

この技術はかなり大規模な研究がなされているようだ。しかし、これらは最後の手段であって、そのためのエネルギーは、当然ながら現状のエネルギー収支の中で実現されねばならない。

この手段の難点は、炭素として固定したものが価値を発生するかどうかということであろう。ダイヤモンドや炭素繊維のような産物が得られれば最高だが。

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